
世界的な景気後退の影響で、ワインも他のあらゆる製品と同様に世界的に見て消費は停滞気味であり、2008年9月以降は価格の上昇も間違いなく緩やかになっています。
しかし大幅に暴落した株式市場や為替市場、商品市場と比較してみますと、「価格が下落」というよりも「価格上昇が止まっている」といった表現が適切かもしれません。
中には価格が若干下落している銘柄もありますが、主要な人気銘柄は比較的安定しています。こうした価格の安定的な推移は、「ワインが世界中で日々現物が消費される一方、ワインの増産は不可能なため、時の経過とともに希少性が増す」という本来の強味を発揮しているからと言えます。
さらに世界のワイン市場は元来「総崩れ」になることは少なく、現在のような状況下でも調子の良い、もしくは安定したマーケットがどこかに存在するものです。
1.日本のマーケット
日本の市場は、企業業績の落ち込みや個人消費支出の減少の影響で、飲食業界の低迷や高額品の売れ行きが伸び悩んでいるものの、昨夏までは上げ一辺倒であったユーロ暴落の影響で各輸入元もワインを相次いで値下げしており、低価格帯から中価格帯は良く動いており、ユーロ下落の恩恵を一番受けているマーケットかもしれません。
2.中国マーケットなど
中国も経済成長が鈍化傾向にあるものの成長路線に変わりなく、中国で最も人気のあるボルドーワイン、ラフィット・ロートシルトやカリュアド・ド・ラフィットなどは相変わらず品薄状態が続き、時の経過とともに飲まれる銘柄も広がってきつつあるなど、ボルドーワインの消費を下支えしている感が強く、ボルドーのネゴシアン(輸出業者)各社も当面は中国を最重要マーケットとして捉えています。
また中国系の人々が主役であるシンガポール、台湾、香港など市場も中国と同じ状況であるといえます。
3.フランスをはじめとするEU諸国その他
フランスをはじめとするユーロ通貨圏のEU諸国は基本的に為替の影響は被っておらず、ワインは生活必需品ととらえられている文化でもあり、元々の消費量も膨大なため、景気の悪化によって多少の落ち込みはあるものの大きな影響は受けていません。
またサブプライムローン問題の当事者とも言えるアメリカも、予想ほどの減少は見られず、同国の根底にある消費意欲の強さを垣間見るかのようです。
苦戦しているのは韓国、ロシア、イギリスなどで、韓国は国内の景気低迷とともに空前のウォン安というダブルパンチを受け、ロシアは石油価格の下落とルーブル安で新規輸入が大幅に減少している状況で、イギリスは金融業界の混迷により国内景気の低迷とともにポンド安が追い討ちをかけている状況といえます。
2008年8月までのワインマーケットは、他の商品市場と同様に、過熱感を伴った価格上昇が続いてきたため、サブプライム問題を契機とするリセッションの影響がなくとも、どこかで調整する局面が必要であったといえます。
分かり易く言えば、以前はレストランで飲み頃のヴィンテージのシャトー・マルゴーが5万円で飲めたものが、リリースされたての若いシャトー・マルゴーが20万円になれば、シャトー・マルゴーの消費そのものが大幅に減少する恐れもあるからです。
世界経済の動向にもよりますが、短期的には今年リリースの2008年ものワインのプリムールのスタート価格は重要な指標となると見ています。全体的に見れば間違いなくスタート価格は前年比で切り下げられるでしょうが、初値の高低よりもリセッション後、初のプリムールのため、現経済環境下での過去のヴィンテージの割安・割高感を計る一つの基準になるはずのためです。
ネゴシアンや大口の買い手は3月までにポジション整理は終えており、投げ物も大幅に減少しているため、プリムール終了後の6月以降、12月にかけて緩やかに好転するのではないかと予想しています。
ワイン関連諸機関の発表のように、フランス、イタリアなど主要生産国ではワイン消費量が減少傾向にあるがその一方で、イギリスの調査会社IWSR社(International Wines and Spirits Record)の調査では114カ国中108カ国で消費量が年々増加の事実が明らかに。IWSR社は、将来、これらの国で順調に消費量が伸びれば、世界の消費量も確実に増加に向うだろうと予想しています。
元来ワイン価格は短期間で上下動するものではなく、中長期に安定的に上昇する傾向にあり、経済状況や為替の動向に一喜一憂することなく、とりわけ現在のような状況では中長期でのキャピタルゲインを望むスタンスがポイントと思料しています。