
アメリカのサブプライムローン問題に起因する金融、商品市場の混乱により株価、為替ともに乱高下を繰り返していますが、ワインの市場がどうなっているのかは投資家の皆様にとっても大きな関心事と思料しています。
基本に立ち返って考えますと、ワインは最初に生産された本数が最大数量であり、時間の経過とともに消費され、希少性が増すとともに価値を上げていきます。
株式や債券と違い、5年後にそのヴィンテージのワインを増やす(増資のように)ことはできませんので、時の経過とともに需要の高い銘柄はその価格(価値)が高くなります。
また需要が生産量を大きく上回る銘柄は、時を待たずに、短期間でその価値を高めていきます。
その意味ではワインの輸出額(実需要)というのは非常に大切な指標でありますが、この数字は必ずしも世の景気や債券相場とは連動していません。
ボルドーワイン委員会の発表によれば、昨年1年間のボルドーワインの輸出金額は過去最高の13億8,400万ユーロを、また輸出量は193万ヘクトリットルを記録しました。
この数字はボルドーワイン全体の販売金額の中で41%を占め、金額ベースでは昨年比9%増(一昨年比30%増)、数量ベースでも7%増でした。
この輸出拡大の要因としては、低価格のエントリーレベルのワインから、10ユーロ以上のワインに消費が移行してきていること、メドックを中心としたグランクリュが根強い人気を誇っているためと指摘されており、不況が叫ばれる中でもワインの消費はそれとは反対に、高級ワインにシフトしてきていると考えられます。
昨年度の欧州市場向けのボルドーワインの輸出金額は、前年対比6%増、数量は同3%増加し、ボルドーワインの輸出全体の63%を占めました。
イギリス向けが金額ベースで1位を維持し、前年比4%増の2億3,500万ユーロで、輸出数量は同9%増の28万747ヘクトリットルでした。
以下は他国の状況です。
金額ベース 数量ベース
★ アイルランド向け 29%増 28%増
★ ベルギー向け 10%増(3位) 2位
★ ドイツ向け 1%増 2%増
(1億2,600万ユーロ)
★ オランダ向け 12%増 8%増
(4,500万ユーロ)
輸出とは別になりますが、フランス国内向けも金額ベースで3%増の9億700万ユーロ、数量ベースでは2%減の161万ヘクトリットルとなっています。 
サブプライムローン問題の発生源のアメリカは金額ベースでは第2位の市場で、6%増の1億9,600万ユーロと伸びを見せ、カナダ向けは金額ベース、数量ベースともに6%増でした。
リサーチ専門会社のニールセン社が6月に発表した「酒類の消費形態に関する米国市場調査レポート」によると、米国の消費者は、不況下であっても家で飲むアルコール購買量は減らさないとの結果が出ています。
サブプライム問題から金融危機が起こり、アメリカ経済は急速に冷え込んでいることは衆目の一致するところですが、ニールセン社の調査では、自宅消費向けの酒類販売は影響を受けておらず、実際、同調査の回答者の8割以上が、1年前と比べて自宅向けのお酒の購買金額は「同じ程度」あるいは「増えている」と回答しており、「減った」と答えているのは、全体の2割にも満たないとのことです。
アジア向けの輸出は急激に伸びており、中国向けは金額ベースで前年比158%増、数量ベースで82%増となり、ワインに対する関税を撤廃した香港も金額ベースで前年比81%増、数量ベースで54%増と大きく伸びました。また韓国も、局地的なワインブームの影響により金額ベースで前年比66%増、数量ベースで40%増を示し、シンガポール向け輸出も金額ベースで33%増、数量ベースで94%増、ロシア向けの輸出が金額ベースで17%増、数量ベースで43%増とそれぞれ拡大しています。
このエリアで最大の市場である日本は、金額ベースで2%と微増ながらも上昇に転じています。
ロバート・パーカーなどの評論家や、ワイン専門誌などが「高品質少量生産」を推奨していることもあり、歴史の浅いマーケットではそれらの評点などがワインを購入するにあたっての指標の一つとなっています。
生産者側もその風潮に応えるべく、ワインの生産量は70年代~90年代前半と比べると平均して減少傾向にあり、需要は前述の通り世界的に万遍なく伸びているにも関わらず生産量が減少傾向にあること、さらには消費されて減少していく特性がワインの価値(価格)を強く下支えしています。
また嗜好性の強い商品であること、世界的に見ても富裕層が消費する酒類の中でワインの支持は最も高く、好不景気の波にあまり翻弄されない要素となっています。
世界経済の後退局面では価格上昇が緩やかになる可能性はあるものの、為替を抜きに考えたワイン自体の価格は今後も安定的に推移すると予測されます。
プリムール(先物)のスタート価格は高止まり傾向でしたが、現在仕込まれている2008年は、数量的にかなり少ない模様ですが、収穫段階での評価は過去3ヴィンテージ(2005、2006、2007の各年)を下回っており、来年のスタート価格はかなり切り下げられる可能性もあり、為替の水準にもよりますが、投資妙味は大きいヴィンテージになると思料しています。