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 有名シャトーを様々な角度から紹介するシリーズの第1回目は、ポイヤックの1級格付、シャトー・ムートン・ロートシルトを取り上げました。
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コラム

シャトー・ラトゥールが身売りか?-エグゼキュティヴバイヤー高橋淳

ボルドー五大シャトーの一つであるシャトー・ラトゥールが売りに出ているとの噂があります。
シャトー・ラトゥールと言えば、ボルドーで最高のワインの一つであり、近年大掛かりな設備の改修工事も終わり、今後が益々期待されるシャトーの一つです。
現在のシャトー・ラトゥールのオーナーはPPRという企業連合で、フランス人の著名な投資家であるフランソワ・ピノー氏が率いています。

フランソワ・ピノー氏は1936年にブルターニュ地方サン・ジェローという村で生まれ、1960年に林業を営む父の後を継ぎ業績を拡大、義父とクレディ・リヨネ銀行の後押しを得て1970年までに同業他社を10社以上買収しました。
少しずつ投資の道に入った彼は、1974年に砂糖の相場で莫大な財を成し、その後は名立たるフランスの企業の買収と売却を繰り返し、1980年代後半にはAGF、バークレイ、クレディ・リヨネなどの金融グループのバック・アップを得てピノー株式会社を上場。

1992年以降、百貨店のプランタン、通信販売のLa Redoute、 CD、ビデオ販売大手のFnac、雑誌Le Pointを買収、1998年には著名なオークションハウスのクリスティーズも買収、1995年には前大統領ジャック・シラク氏との親密な関係から、フランス国鉄SNCFの経営にもタッチし、また実業界での最大のライバルであるLVMH(ルイ・ヴィトン・モエ・ヘネシー)の総帥、ベルナール・アルノー氏に対抗するため、高級ブランドのグッチの60%の株式を取得、シャトー・ラトゥールも買収、スニーカーのプーマによる第3者割当増資も引き受けました。

またプロサッカー・チームであるレンヌとその本拠地レンヌ・スタジアムも買収し、現代アートのコレクターとしても名を馳せ、2007年には世界で第34位、ヨーロッパでは第10位、フランスで第3位の富豪にランクされ、フランスで最高の栄誉、レジオン・ドヌール勲章を叙勲しました。
現在では息子のフランソワ・アンリ・ピノー氏にグループの経営を譲っています。

サンデー・タイムスが報じたところによると、フランスでも稀な富豪と言えるピノー氏も昨年のリーマン・ショック以降、何と1年間で所有する資産の評価が60%も落ち込み、PPRがシャトー・ラトゥールをLazard銀行という投資銀行を通じて水面下で売りに出しているとの噂です。

47ヘクタールの葡萄畑を誇る78ヘクタールの敷地を持つシャトー・ラトゥールの気になる値段は6億ユーロ(130円換算で780億円)と推定され、買い手の候補の一人としてシャトー・パプ・クレマンのオーナーであり、やはりフランスの長者番付では毎年100位以内に入るベルナール・マグレ氏が挙がっており、同氏は一度ラトゥールの買収を企てたこともあり、インタビューでもこの話しを否定しなかったためにその信憑性が高まってしまいました。

ピノー氏サイドではこの話しを全面的に否定しているものの、真相は藪の中で、価格的に折合っておらず、5億ユーロに値下げするとの噂もあります。
リーマンショックの影響が思わぬところからワイン業界にも出てきた形で、今後も注目されることでしょう。

株式会社 ヴァンネット
高橋 淳(エグゼキュティヴバイヤー)


[ 2009/12/25 ]