
Ⅰ.2008 年の天候および収穫
2008 年ヴィンテージの注目点としては、例年よりも遅い収穫時期が挙げられます。ボルドー左岸では比較的冷涼で湿度の高い春を過ぎ、6 月には平年並みとなりましたが、葡萄の生育は例年に比べ若干遅い状況でした。
7 月は天候も良く乾燥しましたが、8 月は一進一退の天候が続き、9 月も第2週目までは日照量が不足気味となり葡萄の生育も懸念されましたが、9 月14日以降、夏を想わせる太陽とともに天候が劇的に回復し、それが10 月20日頃まで続いたため、葡萄の生育状況も完全に反転しました。
この理想的な天候のお陰で、自然の糖度によって高いレベルのアルコールが得られるほど、収穫期には葡萄は十分に成熟し、品質を重視するシャトーでは概ね10 月5 日~10 月20 日頃に収穫を行いました。
6 月の開花時期に天候不順であったため収穫量は並年を下回り、9 月以降の天候回復により、収穫を待つことが出来たシャトーはカベルネ・ソーヴィニヨン、メルロともに少量ながらも非常に質の高い葡萄を収穫し、通常は補助的にブレンドされるプティ・ヴェルドも良く、逆に早めに収穫してしまったシャトーでは複雑さや厚みに欠けるワインとなったようです。
Ⅱ.2008 年もののワインの出来
ボルドー左岸は総じて出来が良く、特にサンジュリアンは3 つのレオヴィルをはじめ全体のレベルが非常に高く、ポイヤックも3 つの1 級格付シャトーをはじめ主要シャトーは優秀な造り、サンテステフではコス・デストゥルネルが例年と比べても頑強な造り(同シャトー史上最高のカベルネ・ソーヴィニヨンの割合=85%と、27hl/ha の低収穫のため)、対照的にモンローズはクラシックなスタイルで、カロン・セギュールとラフォン・ロシェがそれに続く印象です。
マルゴー村は上記3 エリアに比べるとバラツキが見られ、ペサック・レオニャンの赤ワインは例年に比べエレガントでバランスのとれたワインが多いようです。
白ワインは辛口のペサック・レオニャン、甘口のソーテルヌともに2007年ものの水準には及ばない印象です。
右岸の産地はサンテミリオン、ポムロールともにバランス良く、品質的には平均よりも優れたワインが多く、生産者側が濃いワインを競って造っていた一時期よりも、よりクラシックなスタイルのワインが多く見られました。
2008 年の全体的な印象は、事前の予想以上に素晴らしいヴィンテージと言えます。
Ⅲ.ファンドの投資対象としての2008 年ものの魅力
バレル・テイスティングのために今年ボルドーを訪れたバイヤーは例年に比べ少ないそうで、当たり年の前評判がないと来ないアメリカ人、自国通貨が対ユーロで大幅に下落しているイギリス、ロシア、韓国などのバイヤーもほとんど見かけませんでした。
反対に昨年に比べ為替が円高に推移して有利な日本のバイヤーは比較的多く、鈍化しているものの依然として経済成長を続ける中国のバイヤーも多く見かけました。
1.2008 年ものプリムールスタート価格の方向性
古くからのボルドーの大顧客であり、国内の景気後退と為替下落のダブルパンチを受けているイギリスのブローカー達は一致団結し、シャトーのオーナーサイドに対して大幅なスタート価格の切り下げを迫る「ロビー活動」を行っているとのことです。
しかしながら、シャトーのオーナーサイドには●危機感を持っている人々と●楽観的に考えている人々がおり、五大シャトーなどの指標的な銘柄の価格が出るまでは非常に複雑なプリムール・キャンペーンになるかもしれません。
2008 年ものプリムールワインのファンドの投資対象としての魅力は、昨今の経済情勢を反映し、間違いなく昨年よりも大幅に安くなるであろうスタート価格にあり、後はどの程度下がるかが重要となってきます。
4 月6 日に主要シャトーのトップを切って、「シャトー・アンジェリュス」がプリムールの価格を出しましたが、ボルドーのネゴシアン達を含め、寝耳に水のスピード提示であり、主要シャトーの価格が4 月中にほぼすべて出揃った2002 年もののプリムール販売時を思い起こさせました。
2.シャトー・アンジェリュスから考察する2008 年もの銘醸ワインの魅力
このシャトー・アンジェリュスを例に、2008 年ものを含めた5 ヴィンテージのスタート価格と2008 年9 月時点での実勢価格を比較してみると、以下のようになります。
サンテミリオンでは、シャトー・アンジェリュスのワインはシュヴァル・ブランとオーゾンヌの2 大巨頭に次ぐポジションにあり、近年は中国銘柄の一つにもなり、映画「ジェームス・ボンド007」のスポンサーとして作品に登場するなど、世界的なプロモーションが仕掛けられている銘柄です。
過去4 年間の価格推移を検証すると、最も品質的な評価の低かった2004年ものが最も優れた利回りを実現し、100 ユーロを超えるスタート価格になると偉大な当たり年の2005 年を含め、値動きが極端に鈍くなっています。
2008 年もののスタート価格は昨年比で▲40%下落し、2004 年ものの水準になりました。前述の通り品質的には決して悪くないヴィンテージであることで期待感が増しています。
3.対ユーロの為替レートの円高メリットも
さらに現在の為替水準1 ユーロ=135 円程度は、昨年同時期の1 ユーロ=165 円と比べて約20%円高ユーロ安となっており、ワイン価格の下落幅にこれが上乗せされる結果となるため、2009 ワイン投資ファンドにとっては有利な買付価格となります。
中長期的に見たユーロの変動は断言できませんし、為替変動は最大のリスク要因も変わりありません。また今後の世界的な景気動向の予測も難しいですが、2008 年もののプリムールはスタート価格と為替レートの両面から見て、ここ数年で最も有利な投資環境にあると思料しています。